TEL: 082-247-3300
事務所名 | 株式会社MMCコンサルティング |
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代表者名 | 佐多 宗 |
所在地 | 〒730-0037 広島県 広島市中区中町1-9 Yビル3階 |
電話番号 | 082-247-3300 |
sata-hajime@tkcnf.or.jp | |
業務内容 | ・創業・独立の支援 ・売上増対策 ・マーケティング ・自計化システムの導入支援 ほか |
対応地域 | ●広島県:広島市、呉市、廿日市市、大竹市、東広島市、三次市、福山市、尾道市、府中町、海田町、北広島町 |
グループ会社の有限会社 佐多会計事務所は TKC全国会会員です |
TKC全国会は、租税正義の実現をめざし関与先企業の永続的繁栄に奉仕するわが国最大級の職業会計人集団です。 |
中国税理士会
2024.12.2
「株主」の権利は「財産権」と「経営権」です。中小企業では自社株式の大半を経営者が保有しています。なので、普段の経営で「財産権」と「経営権」を意識することは少ないです。しかし、事業承継をする際は重要になります。自社株式の贈与を行う前におさえておきたい事を紹介します。
【「株主」の権利は「財産権」と「経営権」】
◆財産権とは
株を保有していることで得られる「お金を得られる権利」です。
具体的には、株の配当や会社清算時に残余財産を受け取る権利のことをいいます。
◆経営権とは
経営権とは、株主総会の決議を通して「会社全体の経営判断を行なえる権利」です。
具体的には以下のようなことをいいます。
(1) 会社の経営方針・事業内容を決定する
(2) 役員の任命や従業員の異動等、会社の組織体制を決定する
(3) 会社の資産の活用・管理について決定する
経営権と株式の保有割合(持株割合)とは密接に関連があり、持株割合が高いほど行使できる権利が増し、経営への影響が大きくなります。
そのため、事業承継を考える場合、「いつ」「どのタイミングで」「どのくらいの株式を渡すか」について、財産権と経営権を考慮しつつ、長期的な展望で後継者に贈与することが重要です。
<持株割合と株主が行使できる権利>
持株割合 | 3%以上 | 33.4%以上 (1/3超) | 50%超 (1/2超) | 66.7%以上 (2/3以上) |
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株主が行使できる権利 | 取締役に対して株主総会の招集を請求することが可能。 会社の会計帳簿の閲覧やコピーを請求することができる。 | 単独で株主総会の特別決議※1を否決(阻止)することが可能。 | 株主総会の普通決議※2を単独で可決することが可能。 ほとんどの会社の意思決定を行なえるようになる。 | 普通決議※2だけでなく、特別決議も※1単独で可決することが可能。 中小企業の場合、安定した経営のために2/3以上の保有割合を維持することが理想とされる。 |
※1 特別決議:企業の基本的な経営方針や組織形態、構造を大きく変えるような重大な決定。「定款の変更」「会社の合併」「事業の譲渡」「増資」「会社の解散」など。
※2 普通決議:企業の日常的な運営に関わる重要な決定。「役員報酬の変更」「取締役・監査役の選任」「取締役の解任」「配当の決定」など。
【株式贈与の前にやっておきたい3つのこと】
1.自社株評価
上場していない中小企業の株式にも株価はあります。
相続や贈与の場合、「財産評価基本通達」に従って株価を算定します。
その算定方法は会社規模によって異なりますが、一般的には、時価評価した会社の純資産額のほか、類似業種の株価を基礎にして、1株あたりの配当金や利益等の様々な要素を加味して算定されます。
単年度の損益が赤字であったり、資本金が少額であっても、含み益その他の要因により、株価が思いのほか高くなることがあります。
株価が高すぎると、後継者の税負担が重くなってしまうことがあるため、適切な対策を行うことが必要です。
<自社株評価を行うべき企業>
次の項目に1つでも当てはまる場合は、自社株評価を行うことをお奨めします。
□ 社長(または会長)が自社株式の大半を保有している
□ 貸借対照表の「純資の部」の合計が1億円を超えたり、「資本金」の5倍以上になったりしている
□ 会社で所有している土地や有価証券等があり、それらの含み益がある
□ ここ数年、自社株評価をしていない
2.名義株等の整理
平成2年の商法改正以前は、株式会社の設立には7人以上の発起人(株主)が必要でした。
そのため、創業者が設立資金を100%出資しても、家族や親族等の名前を借りて株主になってもらうケースがありました。
このような「名義株」は、特に社歴の長い会社で見られることがあるので注意しましょう。
株主名簿や法人税申告書別表二「同族会社等の判定に関する明細書」を確認し、名義株主の記載がある場合には、その発生経緯を確認し、名義株主の合意を得て本来の出資者へ株を移転させるなどの対応が必要です。
また、経営権をめぐるトラブルを避けるために、経営に関わらない親族等に分散された株式の買い取りなども検討しましょう。
3.株式譲渡制限の有無を確認
譲渡制限の有無は、定款で定める項目で、登記事項証明書で確認することもできます。
中小企業では、株式譲渡に関する制限条項を設けているケースが多く、株式の異動がある場合には、取締役会等での決議・承認が必要になります。
きちんと議事録で決議・承認がなされた旨を記録しておくようにしましょう。
株式の贈与や譲渡後には、株主名簿を最新のものに書き換えることも必要です。
【自社株式の贈与は慎重かつ計画的に】
事業承継における自社株式の贈与は多くの場合、(1)暦年課税制度、(2)相続時精算課税制度で行います。
また、令和9年12月31日までは、「特例事業承継税制」を活用することも可能です。
自社株式の贈与には時間がかかることもあります。
複数年にわたる贈与は、毎年、自社株式の評価を行い、計画性をもって慎重に進めることが必要です。
2024.9.5
発注業者(業務を委託する事業者)とフリーランス事業者(業務を受託する事業者)との取引の適正化等を目的とした「フリーランス法」が令和6年11月1日に施行されます。発注事業者が守るべき最大7つの義務項目を確認し、スムーズな取引に向けて必要な準備を進めましょう。
【発注業者が守るべき「7つの義務項目」】
「組織」である発注事業者と、「個人」として業務を受けるフリーランス事業者との間には、交渉力や情報収集力等に格差が生じやすいです。そのため、フリーランス事業者は弱い立場に置かれることが多くあります。
そうした状況の改善のため、令和6年11月1日から施行されるのが「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、いわゆる「フリーランス法」です。この法律は、原則として、事業者間(B to B)における委託取引を対象としています。
事業者間委託取引の例
●社内広報/商用の写真撮影をフリーカメラマンに委託する
●Webデザイン・パッケージデザインをフリーデザイナー/イラストレーターに委託する
※消費者からの委託や売買契約は含まない
「フリーランス法」では、発注事業者がフリーランス事業者に対して課すべき最大「7つの義務項目」が定められました。ポイントは、発注事業者が満たす要件によって、遵守すべき義務項目が異なることです。
なお、義務項目(1)「書面等による取引条件の明示」については、「個人事業主」や「フリーランス事業者に業務委託するフリーランス事業者」など、従業員を使用していない事業者が業務委託を行なう場合にも遵守すべき義務項目とされていますので注意が必要です。
【義務項目に違反した場合】
公正取引委員会・中小企業庁長官・厚生労働大臣から違反行為についての助言・指導・報告徴収・立入検査・勧告・公表・命令
【命令違反や検査拒否等をした場合】
50万円以下の罰金が科される可能性
法人両罰規定により、同法に違反した場合、違反行為をした行為者だけでなく事業者にも罰金刑が科される可能性があります。
また、同じフリーランス事業者に業務を委託する場合であっても、一定期間以上の業務委託なのか、単発の業務委託なのかで発生する義務項目は異なるため注意が必要です。
【スムーズな発注のために施行までに準備をしましょう】
令和6年11月1日の施行日までに次のようなことを社内でチェックし、必要に応じて業務フローや委託内容等を見直して、書面等を準備しましょう。
□「フリーランス法」の適用対象となる取引先は誰か
□ その取引先に、どのような内容の業務を、どの程度の期間で依頼しているか
□ 報酬の額はいくらか、また支払期日はいつになっているか
□ 依頼している業務内容の条件等は適正か、見直すべき点はないか
【発注事業者が満たす要件と発生する義務項目】
【「7つの義務項目」の具体的な内容】
(1)書面等による取引条件の明示
業務委託した場合、書面等により、直ちに、次の取引条件を明示すること
●業務の内容
●報酬の額
●支払期日
●発注事業者・フリーランス事業者の名称
●業務委託をした日
●給付を受領/役務の提供を受ける日
●給付を受領/役務の提供を受ける場所
●(検査を行う場合)検査完了日
●(現金以外の方法で支払う場合)報酬の支払方法に関する必要事項
(2)報酬支払期日の設定・期日内の支払
発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り早い日に報酬支払期日を設定し、期日内に報酬を支払うこと
(3)禁止行為
フリーランス事業者に対し、1か月以上の業務委託をした場合、次の7つの行為をしてはならないこと
●受領拒否
●報酬の減額
●返品
●買いたたき
●購入・利用強制
●不当な経済上の利益の提供要請
●不当な給付内容の変更・やり直し
(4)募集情報の的確表示
広告等にフリーランス事業者の募集に関する情報を掲載する際に、
●虚偽の表示や誤解を与える表示をしてはならないこと
●内容を正確かつ最新のものに保たなければならないこと
(5)育児介護等の業務の両立に対する配慮
6か月以上の業務委託について、フリーランス事業者が育児や介護等と業務を両立できるよう、フリーランス事業者の申し出に応じて必要な配慮をしなければならないこと
※やむを得ず必要な配慮を行うことができない場合には、配慮を行うことができない理由について説明することが必要
(6)ハラスメント対策に係る体制整備
フリーランス事業者に対するハラスメント行為に関し、次の措置を講じること
●ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、方針の周知・啓発
●相談や苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
●ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応 など
(7)中途解除等の事前予告・理由開示
6か月以上の業務委託を中途解除したり、更新しないこととしたりする場合は、
●原則として30日前までに予告しなければならないこと
●予告の日から解除日までにフリーランス事業者からの理由の開示の請求があった場合には理由の開示を行わなければならないこと
2024.7.1
スピーディーでスムーズな資金調達には、金融機関が融資審査を行う際に何を重視しているのか、あらかじめ金融機関の目線で知っておくと良いです。特に、「借りたお金は何に使うのか」「返済原資は何で、どう返済していくのか」について、社長自身が自分の言葉で説明できることは重要です。
【金融機関が知りたいの2点とは】
融資審査にあたり、金融機関が重視するのは主に次の2つです。
(1)貸したお金は何に使われるのか?
(資金使途)
(2)貸したお金はきちんと返済されるのか?
(返済能力)
金融機関にとっての「商品」はお金です。そして、そのお金は、個人や法人等から「預かったお金」です。だからこそ金融機関は、お金を預けてくれた人(預金者)に対して、商品であるお金が適切に運用されているか、無駄遣いはされていないかなど、きちんと説明する責任があります。
そのため、中小企業等から融資の申し込みを受けた金融機関は、預金者から預かった大切なお金が「何に使われるのか」「きちんと返済してもらえるのか」が最も気になります。
【「運転資金」「設備資金」の違いを理解しましょう】
(1)貸したお金は何に使われるのか?
お金の主な使い道には「運転資金」と「設備資金」があります。
◆運転資金:日常の業務や経営を円滑に進めるために必要な資金。
給与の支払いや原材料の調達費、広告宣伝費、光熱費、家賃等も含まれます。
運転資金 = 回収見込みのある金額 - 支払う必要のある金額
回収の見込みのある金額:売掛金、受取手形、在庫など
支払う必要のある金額:買掛金、支払手形、給与、家賃など
◆設備資金:事業に必要で、一時的に大きな金額となる設備等を購入するための資金。
土地や建物、生鮮機械等の有形資産のほか、ソフトウェアなどの無形資産の導入等が含まれます。
運転資金が必要になるケースは、主に、1.売上の増加(在庫および売掛金の増加)、2.販売・仕入条件の変更(代金の支払時期の前倒しによる買掛金の増加)があります。そのため、「支払う必要のある金額」が増加し、手元の現預金でカバーできくなります。
また、経済状況の激変や災害等の外的要因により、一時的に売上が減少し給与や家賃の支払いが難しくなった場合にも融資を受けることが必要になります。
設備資金は、例えば「店舗を増やしたい」「新たな機会を導入して作業の効率化を図りたい」といった時に必要になる資金です。
設備資金の申し込みの際は、金融機関に設備等の必要性・導入効果を説明する資料(事業計画)と、その設備の「見積書」をあらかじめ用意することが大切です。
運転資金・設備資金のいずれの融資であっても、金融機関からすれば、「将来、返済するためのお金(返済原資)」を生むものでなければ融資は難しくなります。
そのため、運転資金や設備資金として融資を受ける場合には、融資実行後の業績によって、「どのくらい利益が生まれるのか」「その利益からいくら返済していくのか」を、社長自身の言葉で説明できるように準備しておきましょう。これらの説明が明確かつ具体的であればあるほど、金融機関は融資実行を判断しやすくなります。
次のような場合に該当すると、資金使途違反となるおそれがあります。
今後、新たな融資を受けられなくなったり、一括返済を求められたりする可能性もありますので注意しましょう。
●設備資金を運転資金へ流用したとき
●設備投資における見積金額と発注金額に差があり、その差分の流用があったとき
(2)貸したお金はきちんと返済されるのか?
金融機関は、融資の約定に従った元本返済と利息の支払いを求めます。そこで大事になるのが「返済能力」です。
一般的に、返済能力は、1.債務償還力、2.安定的な収益性、3.資本の健全性 の3つの視点から決算書や試算表の数字を基に確認することになります。
1.債務償還力:借入金※1は利益※2の15倍以内である
※1:現金・預金控除後の正味額
※2:償却前営業利益(営業利益+減価償却費)の額
2.安定的な収益性:減価償却前経常利益が2期連続赤字でない
3:資本の健全性:直近の純資産額が債務超過でない
返済能力をチェックするための指標は金融機関によって異なりますが、これらの視点を参考に金融機関と対話をすると良いでしょう。
いざ、資金が必要な時に融資が受けられない事態は避けたいものです。月次決算データを基に、借入金の状況を定期的にチェックすることが大切です。
【定期的な情報開示で金融機関との信頼関係を】
金融機関は定期的に融資先の業績確認を行い、「返済能力は維持されているか」「収益力が低下して借入負担が大きくなっていないか」という点をモニタリングします。
そのため、年1回の決算書だけでなく、定期的に試算表も提出すると良いでしょう。
最新の経営状況を把握することができるため、金融機関の安心感も高まり、信頼関係の構築にもつながります。
2024.1.10
2024年の制度改正は、会社の経営・労務に関するものが多くあります。自社で対応が必要となる改正点を事前に把握し、準備しましょう。
(1)電子帳簿保存法の本格義務化 R6年1月1日~
2024年1月1日から、電子取引データの電子データによる保存が本格的に義務化されます。電子データとは、メールやインターネット経由で受け取った請求書・見積書・領収書等のPDFファイル、画像データなどのことです。原則として、「電子取引データの紙による保存」が認められなくなります。電子データは、電子データとして保存することが徹底できる体制になっているかを確認しましょう。
詳しくはこちらへ
(2)暦年課税制度・相続時精算課税制度の見直し R6年1月1日~
2024年1月1日から相続税・贈与税のルールが大きく変わります。2023年までは3年以内だった暦年課税制度における相続前贈与の加算期間が、2024年1月1日以後の贈与からは7年以内に順次延長されます。
また、相続時精算課税制度には、2024年1月1日以後の贈与から、特別控除2,500万円とは別に、毎年110万円の基礎控除が新設されます。
詳しくはこちらへ
(3)建設業・自動車運転の業務・医師の残業規制開始 R6年4月1日~
2024年4月1日から建設業・自動車運転の業務・医師の時間外労働の上限規制が始まります。
労働時間は原則1週40時間、1日8時間(法定労働時間)以内の必要があると労働基準法で定められています。
これを超えて働く時間(残業時間)の上限について以下の通り定められています。(2019年4月(中小企業では2020年4月)から適用)
●原則として月45時間、年360時間(限度時間)以内
●臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間以内(休日労働含む)、限度時間を超えて時間外労働を延長できるのは年6ヶ月が限度
一方で、以下の事業・業務については、長時間労働の背景に、業務の特殊性や取引慣行の課題があることから、時間外労働の上限について適用が5年間(令和6年3月31日まで)猶予され、また、一部特例つきで適用されることになります。
詳しくは厚生労働省のHPへ
事業・業務 | 2024年4月以降の取り扱い(猶予期間終了後) |
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工作物の建設の事業 | ・災害時における復旧及び復興の事業を除き、上限規制がすべて適用されます。 ・災害時における復旧及び復興の事業には、時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内とする規制は適用されません。 |
自動車運転の業務 | ・特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が年960時間となります。 ・時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内とする規制が適用されません。 ・時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月までとする規制は適用されません。 |
医業に従事する医師 | ・特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外・休日労働の上限が最大1860時間(※)となります。 ・時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内とする規制が適用されません。 ・時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月までとする規制は適用されません。 ・医療法等に追加的健康確保措置に関する定めがあります。 ※特別条項付き36協定を締結する場合、特別延長時間の上限(36協定上定めることができる時間の上限)については、以下となります。 ◆A水準、連携B水準: 年960時間(休日労働含む) ◆B水準、C水準: 年1,860時間(休日労働含む) なお、医業に従事する医師については、特別延長時間の範囲内であっても、個人に対する時間外・休日労働時間の上限として副業・兼業先の労働時間も通算して、時間外・休日労働を、以下とする必要があります。 ◆A水準: 年960時間/月100時間未満(例外的につき100時間未満の上限が適用されない場合がある) ◆B・連携B水準・C水準: 年1,860時間/月100時間未満(例外的に月100時間未満の上限が適用されない場合がある) |
新たに社会保険の適用を行い、従業員の手取りが減らないような取り組み(「社会保険適用促進手当」の支給、労働時間の延長など)を行った事業者が活用できる「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」があります。労働者1人あたり最大50万円が助成されますので、ご参照ください。
2023.12.8
物価上昇や人手不足で賃上げの機運が高まる昨今では、労働分配率の管理は益々重要となっています。生産性のアップや給与・勤務体系の柔軟化、利益分配のルールづくりなどにより、従業員にとって納得感のある給与体系の整備が可能になります。
また、賃上げの原資となる限界利益の確保は重要となっています。
【労働分配率を同業他社と比べてみましょう】
会社が稼ぎ出した限界利益は様々な用途に配分します。その重要な分配先である人件費が限界利益に占める割合を「労働分配率」といいます。
「労働分配率」は次の計算式で求められます。
労働分配率(%)= 人件費 ÷ 限界利益 × 100
人件費には、賃金、給与、賞与、役員報酬、法定福利費等が含まれます。
自社が稼いだ限界利益に対して、人件費がどれ位の割合なのかを確認してみましょう。
労働分配率は業種によって差があります。「TKC経営指標(BAST)」から業種ごとの黒字企業の平均値を確認しましょう。
【業種ごとの労働分配率(黒字企業の平均値)売上規模:全企業】
情報通信業:61.9%
製造業、宿泊業、飲食サービス業:54.1%
建設業:53.3%
運輸業・郵便業:51.9%
小売業:50.6%
卸売業:49.0%
農業・林業:38.9%
出典:「令和5年版 TKC経営指標(BAST)」
【「適切な労働分配率」はどう管理すればよい?】
役員報酬を含む人件費の原則は「労働分配率を抑えながら一人当たりの人件費を高く」することです。
人件費のうち役員報酬については、限界利益額に占める役員報酬総額の割合をあらかじめ決めておくと良いでしょう。
人件費を増やし過ぎれば赤字になる恐れもあります。そのため、自社に合った適切な労働分配率・給与水準を保つことは大切です。人件費に多くを割けない場合に納得感のある給与水準とするには以下のような策があります。
(1)年収の時給換算で生産性アップ
(2)柔軟な勤務・給与体系の設定
(3)利益を公平に分配するルールづくり
(1)年収の時給換算で生産性アップ
年収を、残業時間を含む年間労働時間で割って時給に換算してみると、適切な給与水準を考えるヒントになります。
例えば、年収500万円のとき年間労働時間が2,000時間なら、時給換算すると時給2,500円です。
同じ年収500万円でも、年間労働時間が2,500時間なら、時給2,000円になってしまいます。
同じ年収でも、業務の効率化等で労働時間が短くなれば、労働環境が良くなり、従業員にとってより納得感のある給与水準になります。
次の「生産性アップのポイント」を参考にし、自社に生産性アップの余地がないか検討してみましょう。
【生産性アップのポイント】
●工場レイアウトや生産の段取りの工夫で手持ち時間を減らせないか
●今日成し遂げるべきこと、今月得るべき成果が従業員ごとに明確になっているか
●業務日報や生産日報等で、業務の進捗管理を行っているか
●DXの推進等により業務の効率化を図る余地はないか
(2)柔軟な勤務・給与体系の設定
時期によって労働時間の差が大きい場合、変形労働時間制の導入で総労働時間を少なくできることがあります。
1年単位、1か月単位のほか、特定の業種(従業員30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店の事業)では、1週間単位の非定型的変形労働時間制の採用が可能です。
また、一般的な「固定給+残業代+諸手当」以外に、歩合給や日当制等を取り入れ、柔軟な給与体系にすることも一案です。
業務の量や内容を勤務時間や給与へより細やかに反映することで、適切な労働分配率を維持することが可能になります。
(3)利益を公平に分配するルールづくり
適切な労働分配率を維持すると共に、利益を従業員に分配するルールづくりも大切です。
「給与体系を見直すポイント」を参考に、労働意欲の向上につながる給与体系の整備に取り組みましょう。
【給与体系を見直すポイント】
●仕事の難易度と担当者の人件費は見合っているか
●従業員一人ひとりの業績への貢献度を評価する明確な仕組みがあるか
●頑張った人とそうでない人とは処遇面で具体的にどんな差が出るか
●理想とする具体的な社員像と現実とのギャップを明確に伝えられるか
●財務や販売管理等のデータを人事考課に活用しているか
人件費の目安をつくり、分配のルールを定めることは、より安定的に会社を運営していくために欠かせません。
今後も人件費の増加が見込まれます。適切な水準で無理なく支払い続けるためにも、労働分配率の管理を行いましょう。
また、原資となる限界利益を増やす打ち手を検討しましょう。
2022.12.2
新型コロナウイルス特別貸付で借入をした企業では、そろそろ元本の返済が始まる頃です。
売上が回復し、資金繰りが安定していれば問題ないですが、元本の返済が始まると現状のままでは預金は減少します。
返済に必要な利益がいくらなのかを計算し、具体的な利益目標を設定しましょう。
【返済資金の確保】
2020年3月にスタートした実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」は、「特別利子補給制度」による利子の免除は3年間なので、3年を経過すると利子の支払いが始まります。また、「元本返済の据置」を選択した場合、元本の返済も始まります。
借入金の返済原資は「利益」です。「利益」を確保するための方策は2つです。
【利益確保の方策】
1.限界利益を引き上げる
2.固定費を極力抑える
この両方をミックスさせて黒字決算を実現していきます。
【借入金元本返済の目標利益】
目標利益=(借入金の年間元本返済額 ー 減価償却費)
例)
借入金総額:1,500万円
年間の借入金元本返済額:300万円
年間の減価償却費:100万円
目標利益=(年間の借入金元本返済額300万円 ー 減価償却費100万円)= 200万円
上記の例の場合、年間営業日数が300日であれば、1日当たりの目標利益=200万円÷300日=6,666円
1日当たり約7,000円の利益確保が目標となります。
限界利益率(粗利率)が40%の場合、1日当たりの売上アップ目標=7,000円÷0.4=17,500円
1日当たりの売上は、現在よりも約18,000円プラスを目標設定とします。
【将来的な目標利益】
繰越欠損金がある間は、借入金返済のための目標利益は、上記で計算した金額となります。上記の例だと、年間の目標利益は200万円です。
今後、利益を出し続け、繰越欠損金の控除を使い切ってしまった後は、利益に対して法人税等が課税されます。つまり、税金を支払った後の利益(当期純利益)から借入金の返済を行うことになります。法人税等を課税されるようになった時の利益目標は、下記の計算式で算出します。
【将来的な目標利益】
目標利益=(借入金の年間元本返済額 ー 減価償却費)÷(1- 実効税率)
上記の例で、実効税率が30%の場合、利益目標は以下のようになります。
利標利益=(年間の借入金元本返済額300万円 ー 減価償却費100万円)÷ (1-税率0.3)≒ 285万円
漠然と「返済が始まると大変だ!」と不安に思うのではなく、具体的な数字に落とし込んで目標設定をし、利益確保の具体的な計画を立てましょう。
【利益確保とコスト見直し】
目標利益を算出したら、その目標を達成するための限界利益額のアップやコストの見直し金額の目標設定をすることができます。下記の図表で限界利益率のアップと固定費削減のヒントを掴みましょう。
2022.11.7
【自己資本比率とは】
「自己資本」とは、貸借対照表の「純資産の部」の合計です。
「自己資本比率」とは、総資本に対する自己資本の割合のことです。
自己資本比率(%)= 自己資本 × 100
総資本
【なぜ自己資本比率が注目されるのか】
コロナ禍で売上が0になり困った企業も多いです。しかし、自己資本が潤沢な企業の場合、売上0の状態が数か月続いたとしても、内部留保した蓄え(自己資本)から社員の給与や家賃などを払い続けることができます。「自己資本比率」は、企業が存続できるかどうかを見る尺度の一つですので、注目されています。
【他人資本と自己資本】
貸借対照表の負債(他人資本)と純資産(自己資本)は、資金をどこから調達したかを表しています。返済不要な自己資本の割合が大きいほど、企業の健全性が高いといえます。
他人資本:企業外部から調達した資金で、返済・支払が必要
例)銀行からの借入金、仕入先への買掛金など
自己資本:企業が自ら調達した資金で、返済が不要
例)資本金、利益剰余金など
(1)自己資本>他人資本 の場合
主に株主からの資本金や利益の蓄積(利益剰余金)から資金調達しているため、健全性が高くなります。
(2)自己資本<他人資本 の場合
主に借入金など外部から資金調達しているため、健全性は低くなります。
【どうすれば自己資本比率を高められる?】
自己資本比率を高めるには、以下のような方法が考えられます。
・余裕資金による借入金の返済
・遊休資産の売却による総資産の圧縮
・増資
・利益をきちんと確保する
自己資本比率を高めるには、付加価値を高める経営をすることが大前提となります。そのためには、絶え間なく商品の品質を高め、サービス提供の工夫を行うことが必要です。また、月次決算の精度を高め、業績管理をより確実なものとします。そして、コスト削減に努めて利益を出し、適正な税金を納めて内部留保することを継続していくしかありません。
優良企業の定義の一つに「自己資本比率30%以上」という条件があります。自己資本は、経済情勢が悪化したときに「企業を倒産から守る防波堤」となります。自己資本比率30%を目指して、当期純利益(利益剰余金)を蓄積させていきましょう。
2022.10.3
【付加価値とは】「付加価値」とは、簡単にいうと「限界利益」(粗利)のことです。売上高から「変動費」を引いた金額が「付加価値」です。いわば、会社が創造した価値のことです。
【変動損益計算書とは】
売上の増減によって、増減する経費かどうかで、全ての経費を「変動費」と「固定費」に分けて表示した損益計算書のことです。
◆変動費 … 商品仕入原価や材料費など、売上高の増減によって変わる費用
◆固定費 … 人件費や地代家賃など、売上高の増減によって変わらない費用
通常の損益計算書のように法律で作成が義務付けられているものではありません。あくまでも、社内の業績管理に有効な様式として活用されています。
【損益計算書と変動損益計算書の違い】
(1)通常の損益計算書
製造原価に人件費などの固定費が含まれるため、売上総利益は売上高に比例しません。
(2)変動損益計算書
変動費は、売上高の増減により変わるため、売値や仕入値が変わらない限り、限界利益率は一定となります。つまり、限界利益は売上高に比例します。
(3)変動損益計算書のメリット
1.売上高の増減により限界利益の増減がすぐにわかる
売上高が10%増えれば、変動費・限界利益も10%増加します。よって、売上高の増減により限界利益がどれだけ増減するかが直ぐにわかります。
2.商品1個あたりの限界利益がすぐに掴める
商品1個あたりの限界利益は次の算式で求めることができます。
商品1個あたりの限界利益 = 商品単価 - 商品1個あたりの変動費
= 商品単価 × 限界利益率
商品をいくつ販売すれば、その商品によって限界利益をいくら稼げるのか、販売数量での試算が簡単にできます。
2022.9.7
ウクライナ情勢に急速な円安が拍車をかけ、エネルギーや原材料の価格が高騰しています。
原価の上昇を価格に反映させるだけの値上げはやりにくいと感じている方も多いことでしょう。
客離れを防ぐ上手な値上げ方法はないのでしょうか。
【原価上昇のなか、価格競争で生き残ることは難しい】
原価上昇が続くなか、価格を据え置いていれば、利益が出なくなってしまいます。しかし、競合他社の存在を考えると値上げは難しいものです。
価格競争から脱却する方法は大きく分けて2つあります。
(1)価値を維持して価格を半分にする
(2)価値を4倍にして価格を2倍にする
しかし、(1)には2つの問題があります。
1、価格を半分にして利益が出せるのか
2、コスト削減で価格を半分にできたとしても、やがて他社が追随してくる ⇒ 更なるコスト削減と値下げ ⇒ いずれ限界に達して利益が出なくなる
したがって、(2)価値を高めて価格を上げる為の「知恵比べ」で競争から抜け出さなければなりません。
【値上げのための4つの方法】
(1)値上げしやすい商品や取引先から値上げする
(2)基本形を値下げして、オプション化で客単価を上げる
(3)価格帯を増やす
(4)直販比率を増やす
(1)値上げしやすい商品や取引先から値上げする
あらゆる原材料が値上げされています。このような状況であれば、中国のロックダウン、ウクライナ問題、円安、海上運賃の上昇など、一般的に知られている理由を値上げ交渉の材料にすることができます。
値上げの際は、原材料だけでなく、燃料費、運賃など、値上がりしているもの全てを組み込みましょう。
また、値上げ交渉は、もし取引がなくなったとしても自社の経営に大きな影響を及ぼさない取引先から行いましょう。
(2)基本形を値下げして、オプション化で客単価を上げる
単純な値上げは得意先に反発される可能性があります。そこで、現在の商品の機能や品質を基本形だけに絞り込んだ「基本形」を値下げして提供するようにします。そして、これまで無料で提供していた附属品やサービスなどをオプション化し、付加商品として有料化します。
不要なものを取り除いて値下げすれば、それを好む取引先はそれで満足します。それでは足りない取引先はオプションを付けるでしょう。そうなれば客単価が上がり、利益を上げることができます。
(3)価格帯を増やす
単純な値上げではなく、価格帯を増やすことによって単価を上げる方法もあります。
例えば、現在2つの価格帯を設けている商材であれば、中間にもう1つの価格帯を設けることにより、真ん中の商品が売れるようになります。
単純な値上げと違い、すんなり受け入れてもらえるでしょう。
ただし、あまり価格帯を増やし過ぎると、顧客は選ぶのが億劫になり、買うのをやめることもあります。2段階を3段階にするくらいが良いでしょう。
(4)直販比率を増やす
卸売業者を通して販売している会社や、下請け体制の会社では、直接販売を増やすことで粗利益が増え、実質的な値上げの効果が出ます。
ホームページやSNS、Googleビジネスプロフィールなどを使って、経費がそれほどかからない新しい流通チャンネルの開拓に取り組んでみましょう。特に、YouTubeやTwitter、Facebookなどで、動画を使った情報発信が良いでしょう。
【イメージアップでブランド化する】
「良い物をより安く」が日本の常識です。一方、「良いものは高い」のも常識です。どちらの常識を基準に事業を組み立てるかで、貴社の事業の性格が決まります。
例えば、1本1,000円のワインと、10,000円のワインでは、品質のイメージが全く異なります。10,000円のワインと聞いただけで、人は勝手に高品質をイメージするからです。
つまり、イメージが上がれば、値段が高いのも当たり前になります。もっとも、価格に見合う価値を提供しなければならないのは言うまでもありません。これは、消費者対象のB to Cビジネスだけでなく、企業対象のB to Bビジネスでも同じです。
【イメージを上げる4つの方法】
(1)値上げする
(2)専門化する
(3)オンリーワン化する
(4)商品名を工夫する
イメージを上げるには、(1)値上げする以外にも、(2)専門化する、(3)オンリーワン化する、(4)商品名を工夫する、などの方法があります。これらを組み合わせれば、独自化や差別化ができ、全ての中小企業でブランディングが可能になります。既存の事業や商品を独自化、差別化することで、値上げや価格の見直しが可能になります。
2022.6.1
新型コロナ貸付の実施から約2年が経過しました。措置期間が終わり返済が始まる企業が多くなってきます。返済開始後の財務状況をしっかりと把握し対処していきましょう。
【借入の一本化で返済額を軽減】
新型コロナ貸付の返済が始まると、これまで以上に返済額が多くなります。当然ですが、その分の資金を確保する必要があります。まずは、現在の利益からどれだけ返済に回せるかを検討し、利益確保が難しければ固定費の削減などの改善が必要となります。借入額が多ければ、借入の一本化を行い、月々の返済額の軽減を図ること検討しましょう。
経済産業省が発表した「中小企業活性化パッケージ」では、コロナ資金繰りの支援継続が盛り込まれ、実質無利子・無担保融資の申し込みが2022年6月末まで延長されました。また、運転資金の借入期間がが15年から20年に延長されました。
日本政策金融公庫の融資であれば、借入の一本化を申し込むことができます。借入の一本化により、毎月の返済額を抑えることが可能になります。しかし、毎月の返済額が軽減できても、借入期間の長期化で利息の負担は大きくなります。長期的な目線で検討することが必要です。
また、借入の種類によっては一本化できない場合もあります。自社の借入が一本化できるかどうか、金融機関に相談してみましょう。なお、民間金融機関の借入一本化については、各金融機関に確認しましょう。毎月の返済額については、一本化後でも利益が十分に確保できる金額に設定しましょう。
<借入一本化の例>
現状 | 借入一本化後 |
---|---|
借入:500万円 借入期間:5年 計3本 毎月返済額:252,000円 | 借入:1,500万円 借入期間:20年 計1本 毎月返済額:62,000円 |
【借入一本化後も新たな借入はできるのか】
今後、融資が必要な時、借入一本化後も新たな借入はできるのでしょうか。もちろん借入ができないというわけではありません。売上増加を図るための新規開拓などの改善計画を策定する際、どうしても資金が必要になります。その場合は、金融機関に、新規借入を織り込んでも返済原資の確保が見込まれることがわかる資料を添えて説明しましょう。
2022.4.4
売掛金の中に、長期にわたって未回収のままになっているものはないでしょうか。このような滞留債権は、消滅時効に注意しつつ、法的手段を含めた回収方法を検討し、貸倒れにならないように対応することが必要です。
【1】法的手段をとる前に取引先との交渉をしましょう
回収ができないからといって、すぐに法的手段を行使することはせず、まずは取引先へ訪問、電話をして、交渉を重ねましょう。そのうえで、次のような手続きを検討しましょう。
(1)取引先に買掛金がある場合は相殺
取引先に、売掛金と買掛金がある場合は、滞留している売掛金と買掛金を相殺して、支払いに充当するなどの対応が考えられます。これにより法的手段に至らずに済みます。
(2)相殺後も再度取引先と交渉
買掛金との相殺でも完済できなければ、残金の支払いについて協議する必要があります。
残金を一括で支払うのか、分割で支払うのかなど、取引先の状況を確認し、確実に支払うとの確約を得ることが大切です。この時の協議事項は文書にしておきましょう。
取引先と協議し、回収計画が確定したら改めて残金の請求書を発行しましょう。
【2】法的手段は最終手段
売掛金には消滅時効(5年間)があるため、放置しておくと債権が消滅してしまいます。
債権者に支払いを催告したり、債務を承認させる等の方法によって、時効期間の完成を遅らせたり、振り出しに戻す必要があります。これを時効の完成猶予・更新といいます。
再三の訪問や、電話を繰り返しても、取引先が支払いに応じてくれない場合、回収の最終手段として法的手段をとることも必要です。
(1)まずは内容証明郵便
法的手段をとる前に、催告書を配達証明付きの内容証明郵便で送付しましょう。内容証明郵便は取引先への強い意思表示になり、送付することで事態が進展する可能性もあります。
内容として「誰が誰に対して、どのような契約に基づくどのような債権を、いくら請求しているか」等のほか、「期限内に請求に応じない場合の措置」についても記載します。
<内容証明郵便>
いつ、どのような内容の手紙を出したのかを日本郵便株式会社が証明するものです。
発送は書留で、相手に配達されたことを証明する配達証明付きにします。
同じ文面のものを3通作成し、1通は郵便局、1通は取引先へ送付、1通は差出人が保管します。
(2)主な法的手段は2つ
主な法的手段として「少額訴訟」と「支払督促」があります。通常の訴訟に比べて手続が簡易で、訴訟費用も安く抑えられます。
相手が支払督促に対して異議申立て、少額訴訟に対して同意しない場合は、通常の訴訟に移行することになります。
<少額訴訟>
60万円以下の金銭の支払いを求める訴えについて、原則として1回の審理で紛争を解決する手続です。和解による解決方法もありますが、話し合いによる解決の見込みがない場合は、原則としてその日のうちに判決が出されます。
判決は、一定の条件のもとに分割払い、支払猶予、訴え提起後の遅延損害金の支払免除などを命じることがあります。
[特徴]
・原則として即日判決
<支払督促>
簡易裁判所の書記官が審査し支払いを命じる略式の手続です。相手方が異議を申し立てると通常の訴訟手続で審理されることになります。
相手方が支払督促を受け取ってから異議を申し立てず2週間を経過すると、申立人は30日以内に仮執行宣言の申立てをすることができます。仮執行宣言の申立てがあると、裁判所書記官がその内容を審査し、支払督促に仮執行宣言を付します。仮執行宣言が付されると、申立人は、直ちに強制執行手続をとることができます。申立人が30日以内に仮執行宣言の申立てをしなかった場合には、支払督促は効力を失います。
[特徴]
・書類審査のみで行われる簡易な手続
・証拠の提出や裁判所に出向く必要がない
・通常の手数料の半額
【3】どうしても回収できない場合は貸倒損失の検討を
回収ができない状態が長期化する場合は、勘定科目を売掛金から長期滞留債権へ振り替えます。取引先に以下の事実が発生した場合は、貸倒損失として会計処理することを検討しましょう。
<貸倒れの要件>
(1)金銭債権が切り捨てられた場合(法律上の貸倒れ)
会社更生法、民事再生法の適用等の法的手続により金銭債権が消滅した場合は、税務上、損金算入が認められます。
(2)金銭債権全額が回収不能となった場合(事実上の貸倒れ)
相手方の支払不能等により、金銭債権の全額を回収できないことが明らかになった場合は、税務上、損金経理を行うことで損金算入が認められます。
(3)一定期間取引停止後、弁済がない場合(形式上の貸倒れ)
継続的な取引による売掛債権で、取引停止後1年以上経過した場合、または、売掛債権より回収費用(旅費等)の方が上回る場合。この場合、税務上、備忘価額1円を除き損金経理を行うことで、損金算入が認められます。
2021.2.8
令和3年4月1日から、値札やメニュー表、チラシ、カタログ、ホームページなどの価格の表示方法は、消費税を含んだ「総額表示」が義務化されます。
【総額表示とは】
消費者が商品を購入する際の誤認防止のために、値札やメニュー表などの価格表示を、消費税を含んだ支払総額が分かるように記載することを義務付ける制度です。
しかし、消費税が8%から10%に増税された時、値札の変更等の企業負担を軽減するための特例措置として、令和3年3月31日までは、誤認防止措置をとれば税抜表示も認められていました。令和3年4月1日からは「総額表示」が義務化されます。そのため、現在「税抜表示」の値札やメニュー表などを使用している場合は、値札の貼り替えや印刷物の差し替えなどを行う必要があります。
【総額表示の正しい表記方法】
令和3年4月1日以降は、商品の値札には消費税を含んだ支払総額を記載する必要があります。
下記の例を参考にして値札の表示を修正しましょう。
誤りの例 | 正しい例 |
---|---|
●10,000円(税別価格) ●10,000円(本体価格) ●10,000円+消費税 ●10,000円(表示価格は税別です) | ●11,000円 ●11,000円(うち消費税1,000円) |
現状、総額表示義務を怠ったことに対する罰則はありません。また、見積書や請求書等の金額表示や業者間取引(B to B取引)では総額表示義務の対象にはなっていません。しかし、令和5年10月1日から始まるインボイス制度を見据えて、値札やチラシだけでなく、見積書や請求書等の金額表示も併せて直しておくとよいでしょう。
【インボイス制度】
令和5年10月1日から、消費税の仕入税額額控除の方式として「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が導入されます。適格請求書を交付できるのは、「適格請求書発行事業者」に限られます。「適格請求書発行事業者」になるためには、令和3年10月1日から登録申請書を提出し、登録を受ける必要があります。
【適格請求書(インボイス)とは】
売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。
具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。